悩みから探す

「下請けから抜け出したい」公共の仕事で元請けになるための進め方

公開:2026年11月2日

「元請けの都合で仕事が増えたり減ったりする」「価格を言われるままに受けている」。そんな悩みを持つ会社にとって、国や自治体の仕事は、自社が発注者と直接契約を結べる市場です。募集が公開されているので、紹介がなくても手を挙げられます。この記事では、今の取引を保ちながら公共の元請けを少しずつ増やす手順、国の基本方針にある小さな会社向けの仕組み、工事の許可と審査、元請けとして負う責任をまとめます。

この記事でわかること

先に答え:今の取引を保ちながら、直接の契約を1本ずつ足す

下請けから抜け出す方法を考えるとき、いきなり今の元請けとの取引をやめる必要はありません。売上の支えを残したまま、自社が直接契約する仕事を少しずつ足していくのが現実的です。

公共の仕事は、そのための入口の1つです。民間の発注者に直接売り込むには、紹介や信頼の積み重ねが要ります。国や自治体の仕事は、募集が公開されていて、条件を満たせば参加できます。国の基本方針でも、国などの契約のうち中小企業・小規模事業者向けの割合の目標は61%とされています(くわしくは国の契約の61%を中小企業へ)。

比べるところ下請けの仕事公共の元請けの仕事
仕事の入り方元請けから声がかかる公開の募集を探して手を挙げる
価格元請けとの話し合いで決まることが多い入札や見積で決まる。結果が公表されるものもある
契約の相手元請けの会社国や自治体
負う責任元請けとの契約の範囲発注者への履行の責任、書類、検査への対応
実績外に示しにくいことがある相手と内容をはっきり説明しやすい

ただし、取れることが約束される市場ではありません。価格の競争があり、落ちることも普通にあります。だからこそ、今の取引を保ちながら進めます。

下請けの経験は、公共の仕事の土台になる

下請けで積んだ技術や現場の経験は、公共の仕事でもそのまま役に立ちます。足りないのは技術よりも、次のような「元請けの仕事」であることが多いものです。

これまで元請けの会社が担ってきた部分です。難しく見えますが、小さな仕事から始めれば、1件ごとに身につけていけます。入札そのものへの不安については「入札は難しそう」と感じたらを読んでみてください。

小さな会社に開かれた仕組み

国の「令和8年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」には、小さな会社が元請けとして入りやすくする措置が並んでいます。

仕組み基本方針の内容
分離・分割発注価格面、数量面、工程面、商品の種類ごとに、分けて発注することが効果的・効率的かを検討する
地域要件地域への精通度が大事な仕事では、適切な地域要件の設定や評価項目で、地域の中小企業の活用に努める
等級の配慮極力同じ資格等級の中で競争させる。技術力のある中小企業が上の等級に参入できるよう弾力化を進める
実績の配慮新規中小企業者について、役務や工事の一般競争入札で過去の実績を過度に求めないよう配慮する
少額の見積見積先が固定しないよう、小規模事業者や調達の実績が少ない新規中小企業者にも配慮する

大きな一括の仕事では手が届かなくても、分けて発注された仕事や、地域に限った仕事なら届くことがあります。自社と同じ規模の会社と競う場面が多くなるのも、等級の仕組みがあるからです。

なお、基本方針の直接の対象は国などの機関です。自治体には、基本方針に準じて受注機会の増大に努めるよう要請されている形で、取組の中身は自治体ごとに違います。

1社で届かないときは、組合や共同で

1社では規模や品目が足りないときは、仲間と組む道もあります。

官公需に関する相談には、中小企業団体中央会の「官公需総合相談センター」や、各機関の「官公需相談窓口」が対応するとされています。組合に入るか迷うときも、相談してみるとよいでしょう。

工事の会社が元請けになるときの決まり

建設の下請けから公共工事の元請けを目指すときは、許可と審査の決まりを先に確かめます。

建設業の許可

国土交通省の案内によると、許可が要らない軽微な工事の範囲は次のとおりです(金額は消費税等を含む)。

許可には一般建設業と特定建設業があります。区分の基準は、発注者から直接請け負う工事1件につき、5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上の下請契約を結ぶかどうかです。この金額は令和7年2月1日に引き上げられました。発注者から直接請け負う金額そのものには、一般・特定に関わらず制限はありません。

自社で施工する部分が多く、下請に出す額が小さいなら、一般建設業の許可でも元請けになれるということです。

経営事項審査

公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、「経営事項審査」を受ける必要があります。経営状況や、経営規模、技術的能力などを数値で評価する審査です。許可を持っているだけでは足りない点に注意してください。実際の参加には、発注機関ごとの入札参加資格も確かめます。

工事以外の会社は、国なら全省庁統一資格、自治体ならその自治体の入札参加資格が入口になります。

進める手順:4つのステップ

ステップ1:自社が直接受けられる仕事を洗い出す

下請けで担当している仕事のうち、自社だけで完結できるものを書き出します。清掃、点検、印刷、システムの保守、物品の納入など、工事以外にも公共の募集はたくさんあります。

ステップ2:今の元請けが受けている仕事を調べる

国の契約や工事は、契約の相手と金額が公表されるものがあります。自分の業界の仕事が、どの役所から、どの規模で、いくらくらいで出ているかが見えてきます。調べ方は入札結果と落札価格の調べ方にまとめています。

取引先との関係にも配慮を

元請けの取引先と同じ仕事で競合すると、今の取引に影響することがあります。元請けとの契約に、同業の仕事を制限する条項がないかも確かめておきましょう。別の地域、別の発注機関、別の品目から始めるなど、ぶつからない範囲を選ぶのも手です。

ステップ3:少額の仕事から1件とる

最初の1件は、金額の小さい見積の仕事が向いています。公開で見積を募る方式はオープンカウンターとはで紹介しています。金額は小さくても、発注者と直接やりとりして、納品して、検査を受けて、請求するという流れをひと通り経験できます。

ステップ4:実績を見せて、次の仕事につなげる

契約を守って納めた仕事は、次の仕事の説明材料になります。民間の新しい取引先に「国や自治体と直接契約している」と事実を伝えられるのも、元請けの実績の良いところです。見せ方の決まりは国や自治体との取引を会社の信用につなげる方法で説明しています。

下請けの実績を、公告の「実績」の条件に使えるかどうかは案件によって違います。自社の役割を説明できる資料を残しておき、迷ったら質問の期間に発注機関へ確かめてください。

元請けになると増える責任

良い面だけではありません。元請けになると、次のものが自社の負担になります。

国の基本方針には、受注者の味方になる決まりもあります。契約の途中で労務費や原材料費が上がったときは、入札による契約でも再交渉ができること、申し出たことを理由に次の発注で不利に扱わないことなどです。人件費の比率が高い役務には、毎月払いなどの部分払を行うよう配慮するともしています。

また、下請けの立場でいる間も、守られる決まりがあります。令和8年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)は、協議を適切に行わない一方的な代金の決定の禁止や、手形払などの禁止を定めています。対象になる取引や会社の規模には決まりがあるので、公正取引委員会の案内で確かめてください。「抜け出す」までの間も、価格の交渉はあきらめないでください。

売上の配分の考え方は「売上を安定させたい」もあわせて読んでみてください。

まとめ

元請けとしての最初の1件は、自社に合う募集を見つけることから始まります。入札ウォッチの無料登録で、業種と地域に合う新着の公告を週1回メールで受け取れます。条件は発注機関の公告で確かめてください。

出典・参考にした公式の情報

制度や金額は記事を書いた時点のものです。実際に申し込むときは、発注機関の公告・仕様書と、上の公式の情報で確かめてください。この記事は一般的な情報で、個別の案件への参加や落札を約束するものではありません。