先に答え:創業間もない会社にも参加の道はある
結論から言うと、創業して間もない会社でも、国や自治体の入札や見積に参加する道はあります。理由は3つです。
- 国は、創業10年未満の中小企業(新規中小企業者)向けの契約の目標を、毎年の基本方針で立てている
- 国の基本方針は、発注する側に「過去の実績を過度に求めない」「下位の等級の会社も参加できるようにする」といった配慮を求めている
- 金額の小さい仕事は見積で決まることが多く、資格の等級が低くても参加しやすい
ただし、実績を求める募集や、地元に営業所があることを条件にする募集もあります。どの案件に出られるかは、公告の「参加資格」の欄で一件ずつ確かめることになります。
国は「創業10年未満」向けの目標を立てている
国は、官公需法(官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律)にもとづいて、毎年「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を閣議決定しています。令和8年度の方針(令和8年4月)では、目標が次のように定められています。
| 目標 | 令和8年度 |
|---|---|
| 中小企業・小規模事業者向けの契約の比率 | 61% |
| 中小企業・小規模事業者向けの契約の金額 | 6兆4,572億円 |
| 新規中小企業者(創業10年未満)向けの契約の比率 | 3%以上 |
新規中小企業者は、創業10年未満の中小企業・小規模事業者のことです。方針では、新規中小企業者の契約比率について、前年度までの実績を上回るよう努め、国等全体として3%以上を目標とするとしています。さらに、スタートアップを含む新規中小企業者の受注の機会を増やすことにも取り組むとしています。
目標の全体像は国の契約の61%を中小企業へで詳しく紹介しています。
ここがポイント
目標は「国全体でこれくらいを目指す」という数字で、1件ごとに創業間もない会社を優先するという意味ではありません。それでも、発注する側に「新しい会社にも機会を」という方針があることは、参加をためらう理由を1つ減らしてくれます。
基本方針が求めている「新しい会社への配慮」
令和8年度の基本方針は、新規中小企業者の受注の機会を増やすために、国などに次のような配慮を求めています。
- 過去の実績を過度に求めない:役務や工事などの一般競争入札では、契約の履行の確保に支障がない限り、過去の実績を過度に求めないように配慮する
- 下位の等級の会社も参加できるようにする:専門的な技術や資格が要らない場合などで、履行に支障がないと認められる限り、下位等級の会社も参加できるよう弾力的に運用する
- 少額の見積先に入れる:少額の随意契約では、新規中小企業者を見積先に含めるよう努め、見積先が固定しないよう配慮する
- オープンカウンターは電子的に:見積を公開で募るオープンカウンターは、電子調達システムやホームページなどで公示し、電子メールなども使う
- 相談の窓口:国などが置く「官公需相談窓口」や、中小企業団体中央会の「官公需総合相談センター」で相談に応じる
また、都道府県知事が認定した新しい商品や役務(いわゆる「トライアル発注認定商品等」)について、新規中小企業者が取り組むものの受注の機会を増やすことも挙げられています。地方自治法施行令第167条の2第1項第4号は、自治体の長の認定を受けた会社が作る新商品の買入れや、新しい役務の提供を受ける契約を、随意契約にできる場合として定めています。自社の新しい商品や役務が当てはまりそうなら、所在地の都道府県や市の制度を調べてみる価値があります。
資格の等級は、どう決まる?
国の入札に出るには、全省庁統一資格が要ります。この資格には、A〜Dの等級があります。等級は、申請のときの数字を点数にして、合計点で決まります。調達ポータルの公示では、「物品の販売」「役務の提供等」の等級は次のとおりです。
| 合計点 | 等級 | 予定価格の範囲(物品の販売・役務の提供等) |
|---|---|---|
| 90点以上 | A | 3,000万円以上 |
| 80点以上90点未満 | B | 1,500万円以上3,000万円未満 |
| 55点以上80点未満 | C | 300万円以上1,500万円未満 |
| 55点未満 | D | 300万円未満 |
点数のもとになるのは、年間の平均の売上高、自己資本の額、流動比率、営業年数です(物品の製造は機械設備等の額も入ります)。営業年数は、10年未満がいちばん低い段階です。創業して間もなく売上も小さい会社は、どうしてもC やDの等級になりやすいのが実情です。
下の等級でも出られる仕事はある
国の基本方針は、入札やオープンカウンターの見積合わせを、なるべく同じ等級の中で競うよう求めています。つまり、D等級の会社は、予定価格の小さい案件で、同じD等級の会社と競う形になりやすいということです。大手と同じ土俵に立つ必要はありません。
創業間もない会社は、まず金額の小さい案件や見積から始めて、実績を1件ずつ積むのが現実的な道です。小さな仕事から始める方法は「入札は難しそう」と感じたらで紹介しています。
申請の書類で気をつけたいこと
全省庁統一資格の申請では、法人なら登記事項証明書、財務諸表、納税証明書などを添えます。創業間もない会社が気をつけたい点は次のとおりです。
- 納税証明書:調達ポータルの案内では、法人は「納税証明書その2」と「その3の3」の写しを添えます。「その2」の代わりに「法人税の申告に関する申出書」を使う形も案内されています。どちらを使えばよいかは、自社の申告の状況にあわせて、申請先の案内で確かめてください
- 財務諸表:決算をまだ一度も迎えていない場合の扱いは、調達ポータルの公開の案内では確かめられませんでした。申請の前に、調達ポータルのヘルプデスクや申請先の窓口に問い合わせてください
- 個人事業主:財務諸表を出せない個人の申請は、開業届を添えられると案内されています
自治体の入札参加資格は、自治体ごとに書類や条件が違います。決算の書類や営業年数の扱いも自治体ごとに違うことがあるので、参加したい自治体の要領を早めに確かめておきましょう。申請の時期は自治体の入札参加資格は、いつ申請する?にまとめています。
実績が少ない会社の、最初の一歩
創業間もない会社が最初の1件をとるまでに、やっておきたいことをまとめます。
| やること | 中身 |
|---|---|
| 出せる仕事をしぼる | 本業でそのまま出せる仕事と、動ける地域を決める |
| 資格をとる | 国の全省庁統一資格と、地元の自治体の資格を確かめる |
| 小さな案件を探す | 実績を求めない募集、金額の小さい見積、オープンカウンターを中心に見る |
| 民間の実績を整理する | 公共の実績がなくても、民間で同じ仕事をした実績は、提案や見積の説明に使える |
| 相談の窓口を使う | わからないことは、官公需相談窓口や発注機関の担当に聞く |
公共の仕事の実績は、1件とれると次の入札で「同等の業務の実績」として示せるようになります。実績を信用につなげる方法は「信用と実績を積みたい」で紹介しています。
まとめ
- 創業間もない会社にも参加の道はある。国は創業10年未満の会社向けに、令和8年度は国等全体で3%以上の契約目標を立てている
- 国の基本方針は、実績を過度に求めないこと、下位等級の会社も参加できるようにすること、少額の見積先に新しい会社を入れることを求めている
- 等級は低くなりやすいが、同じ等級の中で競う小さな案件から始められる。書類の扱いでわからない点は、申請先に先に問い合わせる
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