実績がないと、実績がつくれない
新しい取引先に提案すると、ほぼ必ず「これまでにどんな仕事をしましたか」と聞かれます。実績がないと選ばれにくく、選ばれないと実績が増えない。小さな会社がはまりやすい堂々めぐりです。
この堂々めぐりから抜け出す入り口の1つが、国や自治体の仕事です。多くの募集は、条件を満たしていれば、会社の規模や知名度に関係なく参加できます。
公共の仕事が「説明しやすい実績」になる理由
相手と内容がはっきりしている
「〇〇市の庁舎清掃(1年間)」「〇〇省の広報誌の印刷」のように、誰から、どんな仕事を、どれくらいの期間受けたかがはっきりしています。民間の取引では取引先の名前を出せないことも多いですが、公共の契約は、入札の結果として落札者や金額が公表されることが一般的です。
決まった手順を通っている
公共の仕事は、資格の審査、仕様書に沿った仕事、検査、完了の手続きという決まった流れを通ります。「書類をそろえ、決められた手順で仕事を終えられる会社」であることを、具体的な契約で示せます。
新しい会社にも門戸がある
国は毎年「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を閣議決定し、中小企業・小規模事業者向けの契約の目標(令和7年度は61%)に加えて、新しく事業を始めた中小企業との契約を増やす目標も掲げています。創業間もない会社が参加しやすいよう、実績の条件を設けない募集もあります。
実績を積む順番
- 小さな仕事から始める:少額の見積合わせや、条件のゆるい募集から。最初の1件は金額より「完了まで終えること」が大事です
- 同じ種類の仕事を重ねる:清掃なら清掃、印刷なら印刷と、同じ種類の実績を重ねると、「その分野の会社」として説明しやすくなります
- 少し大きな募集に進む:実績を条件にする募集(「過去〇年以内に同種の業務の実績があること」など)に参加できるようになります
- 民間の提案にも使う:公共の実績を、民間の取引先への提案書にも書きます
実績の条件を先に見ておく
大きめの募集では、「同じような仕事を過去に受けた実績」が参加の条件になっていることがよくあります。将来ねらいたい募集の条件を今のうちに見ておくと、どんな実績を先に積めばいいかがわかります。
実績の見せ方と、避けたい言い方
公共の仕事の実績は、会社案内やホームページに書いて構いません。ただし、書き方には気をつけましょう。
| 書いてよい例 | 避けたい例 |
|---|---|
| 〇〇市 庁舎清掃業務(2026年度)を受注 | 〇〇市公認の清掃会社 |
| 全省庁統一資格(役務の提供)を取得 | 国が認めた優良企業 |
| 官公庁・自治体の印刷物の納入実績あり | 国のお墨付きの品質 |
入札参加資格は「参加できる」という資格で、品質を国が保証するものではありません。「公認」「お墨付き」のような言い方は、誤解を招くうえ、発注した機関に迷惑をかけることもあります。事実を、そのまま書くのがいちばん信用につながります。
発注した機関の名前やロゴの使い方
機関の名前を実績として書くことと、その機関のロゴやマークを使うことは別の話です。ロゴの利用は機関ごとに決まりがあるので、使う前に必ず確認しましょう。
信用は「完了まで終えた件数」で積み上がる
公共の仕事で信用を積むいちばんの近道は、地味ですが、受けた仕事を仕様書どおりに、期限までに終えることです。報告書や完了の書類を丁寧に出し、指摘があればすぐに直す。その積み重ねが、次の募集の実績の条件を満たし、民間への提案でも「確かな会社」として話せる材料になります。
まとめ
- 公共の仕事は、相手と内容がはっきりした「説明しやすい実績」になる
- 小さな仕事から始めて、同じ種類の実績を重ねると、大きな募集にも進める
- 実績は事実のまま書く。「公認」「お墨付き」は使わない
自社の業種で、実績の条件がない募集や小さな募集がどれくらい出ているかは、まず見てみるのが近道です。入札ウォッチの無料登録で、業種と地域に合う新着を週1回受け取れます。