業種別の始め方

調査・計画づくりの委託で、役所の仕事を始める手順

公開:2026年10月31日

国や自治体は、政策や計画を決める前に、住民や事業者へのアンケート、地域の実態調査、統計の分析、計画づくりの支援などを外部に委託しています。調査会社やコンサルティングの会社、分析が得意な小さな事務所にも機会がある分野です。答えを先に言うと、始める手順は「役務の資格をとる」「価格以外で評価される募集を見分ける」「成果物と作業の量を仕様書で読み切る」の3つです。

この記事でわかること

役所は、調査と計画づくりを外に頼んでいる

国や自治体の仕事には、法律や計画にもとづいて定期的に行う調査がたくさんあります。たとえば次のような委託です。

分野委託の例
アンケート調査住民の意識調査、事業者の実態調査、利用者の満足度調査
統計・データの分析既存の統計の集計・分析、将来の人口や需要の推計
計画づくりの支援総合計画・分野別の計画の策定支援、委員会の運営の補助
現地の調査交通量や利用状況の調査、施設の現況の調査
効果の検証事業の効果の測定、報告書のとりまとめ

自治体の計画には数年ごとに見直すものが多く、そのたびに基礎になる調査や、計画の案づくりを手伝う委託が出ます。一度の受注で終わらず、同じ分野の調査が何年かおきに出ることも、この分野の特徴です。

資格は「役務の提供等」の「調査・研究」

国の機関の調査の委託に参加するには、全省庁統一資格が必要です。資格の種類のうち、委託の仕事は役務の提供等に入ります。令和7・8・9年度の公示では、役務の提供等の営業品目として、広告・宣伝、写真・製図、調査・研究、情報処理、翻訳・通訳・速記、ソフトウェア開発、会場等の借り上げ、賃貸借、建物管理等各種保守管理、運送などが挙げられています。

調査や計画づくりの委託は、主に「調査・研究」の営業品目で募集されます。データの集計や分析のシステムを使う仕事では「情報処理」、報告書の印刷を含む仕事では印刷の品目が関係することもあるので、自社の仕事の範囲に合わせて品目を選んでおきましょう。

測量・建設コンサルタントの業務は別の資格

道路や河川の設計、測量、地質の調査など、公共工事に関係する調査・設計の業務は、全省庁統一資格とは別の資格(工事や建設コンサルタント等の資格)で募集されます。自社の仕事がどちらに当たるかは、参加したい募集の公告で「どの資格が要るか」を確かめてください。

申請の手順と等級の決まり方は全省庁統一資格の取り方、自治体の資格は自治体の入札参加資格の申請時期にまとめています。

金額で変わる決め方

調査の委託は、物品の買入れや工事とは別の「そのほかの契約」に当たります。国の場合、予算決算及び会計令(予決令)で決め方の範囲が決まっています。

予定価格(そのほかの契約)使える決め方
200万円まで少額の随意契約(見積を比べて決める)にできる(第99条第7号)
350万円まで指名競争入札にできる(第94条第1項第6号)
それを超える一般競争入札が原則

国の少額の随意契約の上限は、2025年4月から、業務の委託などで100万円から200万円に引き上げられました。自治体では、地方自治法施行令の別表第五の範囲内で各自治体が規則で決めていて、上限は都道府県・指定都市で200万円、そのほかの市町村で100万円です。実際の金額は自治体ごとに確かめてください。

小さな調査(短い期間のアンケートの集計など)は見積で、大きな調査は入札やプロポーザルで募集される、というのが大まかな目安です。見積の仕事については「入札は難しそう」と感じたらで紹介しています。

価格以外で評価される募集を見分ける

調査や計画づくりは、同じ金額でも会社によって成果の質が大きく変わる仕事です。そのため、価格だけで決める入札のほかに、提案や技術の中身を評価する方法で募集されることがあります。

方法どう決まるか法令・通知
価格の入札予定価格の範囲内で最も安い価格会計法第29条の6第1項
総合評価の入札価格とそのほかの条件を合わせて最も有利なもの会計法第29条の6第2項、地方自治法施行令第167条の10の2
企画競争(プロポーザル)企画書の中身を審査して選び、随意契約を結ぶ財務省「公共調達の適正化について」(平成18年)

自治体の総合評価の入札では、地方自治法施行令第167条の10の2で、あらかじめ「落札者決定基準」を定め、その方法と基準を公告することになっています。つまり、どの項目に何点がつくかは、募集の時点で公開されているということです。

価格では大きな会社にかなわなくても、地域の事情に詳しい、同じような調査の経験がある、担当者が最後まで直接対応できる、といった点が評価項目に入っていれば、勝負できる余地があります。企画書の書き方はプロポーザルで選ばれる企画提案書のつくり方にまとめました。

評価の基準から「何を求められているか」を読む

総合評価やプロポーザルの募集では、評価項目と配点の表を最初に読みましょう。配点が大きい項目ほど、発注する側が重く見ているところです。提案書は、その表の項目の順に、1つずつ答える形でつくると読みやすくなります。

仕様書で読むところ:作業の量と成果物

調査の委託は、目に見える物を納めるのではなく、作業と報告書を納める仕事です。仕様書で作業の量を読み違えると、そのまま赤字につながります。

読むところ確かめること
調査の対象と数何人・何社に、どの方法(郵送・Web・聞き取り)で調べるか。回収の目標があるか
作業の範囲調査票の設計、発送、督促、入力、集計、分析のどこまでが自社の仕事か
打合せ・会議打合せの回数、委員会への出席や資料づくりがあるか
成果物報告書の部数・形式、元のデータの納品、概要版の有無
履行期間年度末までに終わらせる日程か。調査の時期が決まっているか
個人情報の扱い回答者の情報の管理方法、作業場所の条件、再委託の可否

郵送の調査なら、発送・返信の郵便代や印刷代が大きな費用になります。仕様書に費用の負担が書かれていなければ、質問の期間に確かめておきましょう。読み方の全体は入札の公告・仕様書の読み方にまとめています。

はじめの1件をどう取るか

調査や計画づくりの分野は、実績を見られることの多い仕事です。はじめての会社は、次の順で進めると無理がありません。

  1. 資格をとる:国なら全省庁統一資格の役務の提供等(調査・研究)、自治体ならその自治体の委託の区分
  2. 小さな調査の見積から出る:アンケートの集計や入力など、作業の範囲がはっきりした仕事から
  3. 民間での実績も整理しておく:役所の実績がなくても、民間の調査や分析の経験は、提案書や参加の条件の確認で示せることがあります
  4. 価格以外で評価される募集に出る:自社の強みが評価項目に入っている募集を選ぶ

募集は、国なら各機関のホームページや調達ポータル、中小企業庁の官公需情報ポータルサイト、自治体なら入札・契約のページやプロポーザルの募集のページに出ます。調査・計画の委託の入札は調査・計画の委託の入札を都道府県別に見るからも探せます。

まとめ

調査や計画の委託の募集は、さまざまなページに分かれて出ます。入札ウォッチの無料登録で、業種と地域に合う新着を週1回メールで受け取れます。

出典・参考にした公式の情報

制度や金額は記事を書いた時点のものです。実際に申し込むときは、発注機関の公告・仕様書と、上の公式の情報で確かめてください。この記事は一般的な情報で、個別の案件への参加や落札を約束するものではありません。