先に答え:イベントの仕事は「提案で選ぶ」形が多い
清掃や物品の納入のように、仕様がはっきり決まる仕事は、最も安い会社が落札する入札に向いています。一方で、イベントの企画や広報は、どんな内容にするかで成果が大きく変わります。そこで、提案の中身で相手を選ぶプロポーザルが使われることがあります。
大阪広域環境施設組合のガイドラインは、公募型プロポーザルを次のように説明しています。
- 業務委託の相手を選ぶ方法の1つで、選ばれた事業者とは随意契約を結ぶ
- 根拠は、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」
- 一般競争入札という原則の例外なので、業務の性質や目的を考えて限定的に採用する
なお、このガイドラインはこの組合の決まりです。プロポーザルの運用は、発注機関ごとに定められています。国の機関では、同じような選び方を「企画競争」と呼ぶことがあり、広報の仕事には価格と中身を点数で比べる総合評価の入札を使えることもあります。どの方式かは公告で確かめてください。
実際の公募を見てみる(栃木県の例)
ここでは、栃木県が令和8年に実施した「SDGs普及促進イベント企画・運営業務」の公募を例にします。募集はすでに終わっていますが、どんな条件が書かれるかを知るよい材料です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約期間 | 契約締結日から令和9年3月19日まで |
| 委託料の上限 | 1,833,150円(消費税等を含む) |
| 審査 | 書面による審査 |
| 契約代金 | 業務完了後の精算払い |
| 提案の数 | 1者1提案 |
参加の条件
要領が挙げている条件は、次のとおりです。
- 地方自治法施行令第167条の4に当てはまらないこと
- 県の入札参加資格を持っていること。または契約締結時までに資格を取得する見込みであること
- 指名停止の期間中でないこと
- 民事再生や会社更生の申立てがされていないこと(開始決定を受けた場合を除く)
- 暴力団排除条例に当てはまらないこと
資格がまだなくても参加できる余地がある例です。ただし、ほかの公募で同じとは限りません。自治体の資格については自治体の入札参加資格は、いつ申請する?を読んでみてください。
日程
公表から提案書の締切まで、この例では23日でした。
| 手順 | 日付 |
|---|---|
| 実施要領の公表 | 4月27日 |
| 質問の受付期限 | 5月1日 |
| 質問への回答 | 5月8日 |
| 参加表明書の提出期限 | 5月12日 |
| 参加資格の確認結果の通知 | 5月14日 |
| 企画提案書の提出期限 | 5月20日 |
| 審査と結果の通知 | 5月下旬 |
質問の期限は公表から4日後、参加表明は2週間ほど後です。企画を考え始めるのが遅いと、質問の機会を逃します。公募を見つけたら、その日のうちに日程を書き出しましょう。
評価の配点から、どこに力を入れるかを読む
この公募の評価基準は、5人の選定委員が次の項目を採点します。
| 評価項目 | 見られる内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 業務内容の理解度 | 目的と内容を理解し、仕様書を満たしているか | 20 |
| 提案内容の優良性 | 具体性、妥当性、実現可能性があるか | 20 |
| 業務遂行の安定性 | 実施体制やスケジュールが安定しているか | 20 |
| 業務実施の確実性 | 類似の業務の実績、同等以上の成果が期待できるか | 20 |
| 提案内容の独創性 | 独自の発想や工夫があるか | 15 |
| 必要経費 | 内容に見合った適切な経費か | 5 |
読みとれることは3つあります。
- 安さの点は5点だけ:この例では、価格を下げても大きな差はつきません。上限額の範囲で、内容に見合う経費を示すことが大切です
- 独創性より、理解と実現性:奇抜なアイデアだけでは点が伸びません。独創性は15点で、残りの多くは目的の理解や体制の点です
- 実績も見られる:類似の業務の実績が評価項目にあります。実績が少ない会社は、担当者の経験や小さな催しの実績をどう示すかを考えます
また、総合点が60点未満の提案者は、提案者が1者だけでも選ばれません。最高点と評価した委員が最も多かった者が候補になり、同じ数なら総合点、それでも同じなら見積の安さで決まる仕組みです。
提案書を組み立てる考え方はプロポーザルで選ばれる企画提案書のつくり方にくわしく書いています。
提案書で読み落としやすい決まり
この公募では、企画提案書の様式は任意で、次の4点を含めることになっていました。
- 企画提案の内容
- 実施計画と全体のスケジュール
- 業務を行う人員の体制
- 類似事業の業務実績
さらに、細かい決まりがいくつかあります。こうした条件は公募ごとに違うので、要領を最初から最後まで読みます。
- 匿名:提案書に参加者の名前やロゴなど、誰の提案かが推測できるものを入れない
- 雨天の案:雨の日に実施できない提案なら、雨天時の案もあわせて出す
- 独自の提案の費用:独自の企画にかかる費用も委託料に含める
- 形式:提出物はPDFに変換し、電子メールで送ったあとに電話で連絡する
- 費用:提案書の作成と提出の費用は参加者の負担
普段の営業資料には会社のロゴが入っているはずです。そのまま使うと条件に反してしまいます。
失格になる行為
この要領では、虚偽の記載、提出条件の違反、見積書の金額が上限額を超えること、選定委員に直接・間接に接触することなどが失格の理由です。委託料の上限は、独自の提案の費用も含めて超えないように計算してください。
イベントの仕事ならではの確認点
お金の流れ
この例の支払いは業務完了後の精算払いです。会場費や外注費を先に払う仕事では、完了まで資金が必要になります。国の基本方針は、受注者の資金繰りのため部分払に努めるとしていますが、自治体の案件でどうなるかは募集ごとに確かめます。支払いの時期は、応募する前に仕様書と契約書の案で見ておきましょう。
外注と再委託
イベントは、音響、設営、警備、印刷などを協力会社に頼むことが多い仕事です。再委託を認めるか、事前に届け出や承諾が必要かは、仕様書と契約の条件で確かめます。国の基本方針は、外注が必要な元請に対して、外注先の適正な代金と工期を確保し、作業内容・人件費単価・期間などを前もって書面で明確にすることを入札説明の際に周知するとしています。
著作権
ポスター、動画、記録写真などを作る仕事では、権利の扱いが問題になります。国の基本方針は、発注の内容に著作権などの知的財産権が含まれるときは、その財産的価値に留意し、発注者へ無償で譲渡させないこと、取扱いを書面で明確にすることを定めています。自治体の案件は同じとは限りません。成果物の権利がどちらに残るかは、仕様書と契約書の案で確かめてください。
始める手順
- 出せる範囲を決める:企画だけか、当日の運営までか。音響や設営を協力会社に頼めるかも整理します
- 去年の募集を見る:同じ催しは翌年も出ることがあります。実施要領と評価基準を読むと、準備の中身が見えてきます
- 資格を確かめる:参加したい自治体の入札参加資格と受付時期を調べます
- 実績の資料を用意する:民間の催しでも、規模、来場者数、役割を整理しておきます
- 小さな公募から出す:上限額が大きすぎず、自社の体制で動かせるものを選びます
印刷物やデザインを一緒に受ける会社は、入札ウォッチの印刷・広報の入札情報も見てみてください。印刷から始める手順は印刷会社が役所の仕事を始める手順にあります。
まとめ
- イベントの企画・運営は、提案の中身で選ぶプロポーザルで発注されることが多い。自治体の場合、法令上は随意契約の一種
- 例に挙げた栃木県の公募では、100点のうち経費は5点。目的の理解、実現性、体制、実績が中心
- 質問と参加表明の期限は早い。匿名の決まりや上限額など、失格につながる条件は最初に確かめる
- 支払いの時期、再委託、著作権は、応募の前に仕様書と契約書の案で見ておく
提案の準備には時間がかかるので、募集を早く知ることが大切です。入札ウォッチの無料登録で、業種と地域に合う新着の公告を週1回メールで受け取れます。条件は発注機関の公告で確かめてください。