業種別の始め方

印刷会社が役所の仕事を始める手順。資格の品目と仕様書の見どころ

公開:2026年10月30日

市の広報誌、県の観光パンフレット、選挙のお知らせ、各種の封筒や申請書の様式、調査の報告書。国や自治体の仕事には、印刷物がたくさんあります。部数や仕様がはっきり書かれた募集が多く、印刷会社にとっては、ふだんの仕事に近い形で参加しやすい分野です。始めるときの手順と、印刷ならではの確認点をまとめます。

この記事でわかること

役所の印刷の仕事には、どんなものがあるか

国や自治体は、住民へのお知らせや手続きのために、毎年たくさんの印刷物をつくっています。募集に出る印刷の仕事には、たとえば次のようなものがあります。

種類募集の例
定期の刊行物広報誌、議会だより、学校や公民館のお便り
案内・啓発パンフレット、リーフレット、ポスター、チラシ
事務用の印刷物封筒、申請書や通知書の様式、名刺、ハガキ
冊子計画書、報告書、統計書、記念誌
データ処理つき通知書の宛名印字・封入封かん(個人情報を扱う)

広報誌のように毎月・毎号出るものは、1年分をまとめて募集することもあります。1件の金額は大きくなくても、毎年同じ時期に出る募集が多いのが印刷の特徴です。

はじめる前に:資格の「品目」を選ぶ

国の機関の入札に参加するには、全省庁統一資格が要ります。令和7・8・9年度の公示では、資格の種類のうち「物品の製造」と「物品の販売」に、「フォーム印刷」「その他印刷類」という品目があります。あわせて、図書類、電子出版物類、紙・紙加工品類といった品目もあります。

印刷を自社でする会社は「物品の製造」、仕入れて納める会社は「物品の販売」が中心になります。どちらの品目で申請するかで参加できる募集が変わるので、ふだんの仕事に合わせて選びます。申請の手順と書類は全省庁統一資格の取り方にまとめています。

自治体は別に申請する

都道府県や市区町村の印刷の仕事には、その自治体の資格が要ります。自治体ごとに品目の分け方や受付の時期が違うので、自治体の入札参加資格は、いつ申請する?を参考に、参加したい自治体の案内を確かめてください。

仕様書で確かめたい8つの項目

印刷の募集は、仕様書に条件がこまかく書かれていることが多く、読み落としがそのまま赤字や手直しにつながります。見積の前に、少なくとも次の項目を確かめます。

  1. 部数:分納があるか、予備の部数を含むか
  2. 版型とページ数:A4・B5などの仕上がりの寸法、ページ数、表紙の有無
  3. 用紙:用紙の種類と厚さ。「同等品以上」と書かれていることもある
  4. 色数:表紙と本文で色数が違うことがある
  5. 原稿とデータ:原稿やデータが支給されるのか、デザインや組版から頼まれるのか
  6. 校正:校正の回数、色校正の要否、校正にかける日数
  7. 納期と納品場所:1か所か、複数の施設へ分けて届けるのか。梱包の指定があるか
  8. データの扱い:完成データの納品、二次利用、著作権の扱い、個人情報の取り扱い

とくに5番は金額を大きく左右します。デザインや原稿づくりから頼まれる仕事は、印刷だけの仕事とは見積の考え方がまったく違います。仕様書を読んでもわからないことは、質問の受付期間に問い合わせます。

宛名や通知書の仕事は個人情報に注意

通知書の宛名印字や封入封かんの仕事では、個人情報の管理の体制を参加の条件にしている募集があります。どんな体制が求められるかは募集ごとに違うので、公告と仕様書で確かめてください。

グリーン購入法の「印刷」の基準に備える

国の機関は、グリーン購入法にもとづく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」に沿って、環境にやさしい物品を選ぶことになっています。この基本方針には「印刷」という品目があり、判断の基準が定められています。環境省のページでは、最新の基本方針は令和8年2月3日に変更の閣議決定がされたものです。

そのため、国の機関の印刷の募集では、仕様書で基本方針の「印刷」の判断の基準を満たすことを求められることがあります。たとえば、省庁がつくった冊子の奥付に、「印刷用の紙にリサイクルできる材料(Aランク)だけを使ってつくった」といった表示が入っているのを見たことがある人も多いと思います。これはこの基準に沿った表示の一例です。

基準を満たす印刷用紙については、環境省のページで、製紙メーカーや印刷の業界団体が適合製品の情報を公表していることが案内されています。用紙のほか、インキや加工の資材の選び方も関係するので、基準の中身は、環境省の基本方針と、募集ごとの仕様書で確かめるようにしてください。自治体も、独自のグリーン購入の方針を持っていることがあります。

価格の考え方と、始め方

印刷の入札は、価格だけで決まる方式が多い分野です。はじめての募集では、次のような順で考えると無理がありません。

見積で決まる仕事の考え方は「入札は難しそう」と感じたらで紹介しています。

デザインから頼まれる仕事は「企画提案」のことも

観光パンフレットや記念誌のように、デザインや内容の工夫が大事な仕事は、価格の入札ではなく、企画提案(プロポーザル)で相手を選ぶことがあります。提案のつくり方はプロポーザルで選ばれる企画提案書のつくり方にまとめました。

よくある疑問

小さな印刷会社でも参加できる?

参加の条件を満たしていれば、会社の規模で断られることはありません。国の資格では、売上高や自己資本などで等級が決まり、金額の小さい仕事は低い等級の会社にも開かれています。まずは、自社の設備でできる部数・加工の募集を選ぶところから始めると無理がありません。

毎年同じ会社が受けているように見えるけれど?

前の年の落札結果を見ると、同じ会社が続けて受けている仕事もあります。ただ、入札の募集は毎回公告されるので、条件を満たせば新しい会社も参加できます。価格の目安を前の年の結果でつかみ、仕様をよく読んで見積を出すことが第一歩です。

まとめ

印刷の募集は、全国の省庁・自治体のホームページに散らばっています。入札ウォッチの無料登録で、印刷の新着を地域ごとに週1回メールで受け取れます。

出典・参考にした公式の情報

制度や金額は記事を書いた時点のものです。実際に申し込むときは、発注機関の公告・仕様書と、上の公式の情報で確かめてください。この記事は一般的な情報で、個別の案件への参加や落札を約束するものではありません。