役所のIT・Webの仕事には、どんなものがあるか
国や自治体のIT・Webの募集は、大きな新規開発ばかりではありません。たとえば次のような仕事があります。
| 種類 | 募集の例 |
|---|---|
| Webサイト | ホームページの制作・リニューアル、更新作業、サーバーの保守、アクセシビリティの点検 |
| システムの運用・保守 | 庁内のシステムの保守、ヘルプデスク、機器の設定や入れ替え |
| ソフトウェアの開発 | 業務用の小さなシステム、アプリ、データベースの改修 |
| データの処理 | データの入力、紙の資料の電子化、集計・分析 |
| クラウドの利用 | 業務で使うクラウドのサービス(SaaS)の利用契約 |
保守や運用の仕事は、1年単位の契約として毎年のように募集が出ることが多く、売上の見通しを立てやすい仕事です。
はじめる前に:資格の品目を選ぶ
国の機関の入札に参加するには、全省庁統一資格が要ります。令和7・8・9年度の公示では、資格の種類のうち「役務の提供等」に「情報処理」「ソフトウェア開発」の品目があります。ほかにも「電子出版」「調査・研究」「広告・宣伝」などの品目があり、ホームページの制作や広報の仕事では、こちらが関係する募集もあります。パソコンなどの機器を納めるなら「物品の販売」の「電子計算機類」なども関係します。
募集の公告には、どの品目の資格が要るかが書かれています。自社の仕事に関係しそうな品目をまとめて申請しておくと、参加できる募集の幅が広がります。手順は全省庁統一資格の取り方にまとめています。自治体の仕事には、その自治体の資格が別に要ります。
IT系は「価格だけで決まらない」募集が多い
印刷や物品の納入は価格の入札で決まることが多いのに対して、IT系の仕事は、提案の中身や体制も評価して相手を決める募集がよく見られます。
- 総合評価の入札:価格と、提案や技術の点数を合わせて評価する
- 企画競争(プロポーザル):複数の会社から企画書などを出してもらい、その内容を審査して選ぶ
財務省の通知(平成18年)では、企画競争を「複数の者に企画書等の提出を求め、その内容について審査を行う方法」と説明し、参加者を公募することや、あらかじめ具体的に定めた複数の採点項目で採点することなどで、競争性と透明性を担保するよう求めています。提案書のつくり方はプロポーザルで選ばれる企画提案書のつくり方で紹介しています。
仕様書で確かめたいこと
IT系の仕様書は分量が多くなりがちです。読むときは、次の点を先に確かめると、参加できるかどうかを早く判断できます。
- 業務の範囲:開発だけか、運用・保守までか。何年分の契約か
- 体制の条件:責任者や担当者に求める経験・資格、常駐の要否、作業場所
- セキュリティの条件:情報の取り扱いのルール、第三者の認証の取得を条件にしているか、再委託の制限
- 成果物と著作権:設計書やソースコードの納品、著作権の帰属
- 既存のシステムとのつながり:前の業者がつくった仕組みの引き継ぎ、データの移行
- 評価の方法:価格だけか、総合評価か、提案の評価項目と配点
「再委託」の決まりはとくに注意
仕事の一部をほかの会社に頼むこと(再委託)を、禁止したり、事前の承認を条件にしたりしている募集があります。協力会社と組んで受けるつもりなら、仕様書で再委託の決まりを先に確かめてください。
SaaSを持つ会社は「デジタルマーケットプレイス」も
自社でクラウドのサービス(SaaS)を持っている会社には、もう1つの道があります。デジタル庁のデジタルマーケットプレイス(DMP)です。
デジタル庁の説明では、DMPは、行政機関がクラウドソフトウェア(SaaS)を迅速かつ公平に調達できる環境を整えるための取組です。事業者がSaaSの製品や導入支援のサービスをカタログサイトに登録し、政府や自治体はその中から仕様に合うものを検索・選定して、随意契約や指名競争入札を行えるとされています。デジタル庁は、幅広い事業者の登録を促すことで、中小企業・スタートアップを含む多様な事業者の公共調達への参入を促すとしていて、中小企業・スタートアップも登録できると案内しています。
登録の手続きや条件は、デジタル庁のDMPのページで最新の案内を確かめてください。
小さく始めるコツ
- 保守・更新の小さな募集から:自治体のホームページの更新作業や、小さなシステムの保守は、金額が比較的小さく、ふだんの仕事に近い内容のことが多い分野です
- 地元の自治体から:打ち合わせや現地作業がある仕事は、近くの自治体の方が無理なく対応できます
- 実績を書ける形で残す:役所との取引の実績は、次の提案書で「同じような仕事の実績」として書けます。実績の積み方は官公庁との取引実績と信用でも紹介しています
よくある疑問
社員が数人の会社でも参加できる?
参加の条件を満たしていれば、会社の規模で断られることはありません。ただし、IT系の募集では、責任者や担当者の経験、作業できる人数、セキュリティの体制などを条件にしていることがあります。仕様書の「参加資格」「業務の実施体制」の欄を先に読み、自社の人数で無理なく回せるかを判断してください。少人数の会社は、運用・保守の範囲が小さい募集や、作業の内容がはっきり決まっている募集から選ぶと始めやすくなります。
前の業者がつくったシステムの保守でも受けられる?
前の業者がつくったシステムの保守を、新しく募集することはよくあります。その場合は、設計書などの資料がどこまで渡されるか、引き継ぎの期間があるか、ソースコードを見られるかが大切です。仕様書に書かれていなければ、質問の受付期間に確かめます。わからないまま安い価格で受けると、調べる手間がかさんで赤字になることがあります。
まとめ
- 役所のIT・Webの仕事には、ホームページの保守、システムの運用、データの処理など、中小の会社でも手の届く募集がある
- 国の全省庁統一資格では「役務の提供等」の「情報処理」「ソフトウェア開発」などが中心。価格だけでなく提案や体制を評価する募集が多い
- SaaSを持つ会社には、デジタル庁のデジタルマーケットプレイスという経路もあり、中小企業・スタートアップも登録できる
IT・Webの募集は、システム、保守、ホームページなど言葉がばらばらで探しにくい分野です。入札ウォッチの無料登録で、IT・システムの新着を地域ごとに週1回メールで受け取れます。