業種別の始め方

IT・Web制作の会社が、役所のシステムの仕事を始めるには

公開:2026年10月30日

国や自治体のIT・Webの仕事というと、大手のシステム会社が請け負う大きな開発を思い浮かべるかもしれません。でも実際には、ホームページの更新や保守、小さなシステムの運用、データの入力など、中小の会社でも手の届く規模の募集もあります。さらに、クラウドのサービス(SaaS)を国や自治体に届ける新しい仕組みも始まっています。始め方を順番にまとめます。

この記事でわかること

役所のIT・Webの仕事には、どんなものがあるか

国や自治体のIT・Webの募集は、大きな新規開発ばかりではありません。たとえば次のような仕事があります。

種類募集の例
Webサイトホームページの制作・リニューアル、更新作業、サーバーの保守、アクセシビリティの点検
システムの運用・保守庁内のシステムの保守、ヘルプデスク、機器の設定や入れ替え
ソフトウェアの開発業務用の小さなシステム、アプリ、データベースの改修
データの処理データの入力、紙の資料の電子化、集計・分析
クラウドの利用業務で使うクラウドのサービス(SaaS)の利用契約

保守や運用の仕事は、1年単位の契約として毎年のように募集が出ることが多く、売上の見通しを立てやすい仕事です。

はじめる前に:資格の品目を選ぶ

国の機関の入札に参加するには、全省庁統一資格が要ります。令和7・8・9年度の公示では、資格の種類のうち「役務の提供等」に「情報処理」「ソフトウェア開発」の品目があります。ほかにも「電子出版」「調査・研究」「広告・宣伝」などの品目があり、ホームページの制作や広報の仕事では、こちらが関係する募集もあります。パソコンなどの機器を納めるなら「物品の販売」の「電子計算機類」なども関係します。

募集の公告には、どの品目の資格が要るかが書かれています。自社の仕事に関係しそうな品目をまとめて申請しておくと、参加できる募集の幅が広がります。手順は全省庁統一資格の取り方にまとめています。自治体の仕事には、その自治体の資格が別に要ります。

IT系は「価格だけで決まらない」募集が多い

印刷や物品の納入は価格の入札で決まることが多いのに対して、IT系の仕事は、提案の中身や体制も評価して相手を決める募集がよく見られます。

財務省の通知(平成18年)では、企画競争を「複数の者に企画書等の提出を求め、その内容について審査を行う方法」と説明し、参加者を公募することや、あらかじめ具体的に定めた複数の採点項目で採点することなどで、競争性と透明性を担保するよう求めています。提案書のつくり方はプロポーザルで選ばれる企画提案書のつくり方で紹介しています。

仕様書で確かめたいこと

IT系の仕様書は分量が多くなりがちです。読むときは、次の点を先に確かめると、参加できるかどうかを早く判断できます。

  1. 業務の範囲:開発だけか、運用・保守までか。何年分の契約か
  2. 体制の条件:責任者や担当者に求める経験・資格、常駐の要否、作業場所
  3. セキュリティの条件:情報の取り扱いのルール、第三者の認証の取得を条件にしているか、再委託の制限
  4. 成果物と著作権:設計書やソースコードの納品、著作権の帰属
  5. 既存のシステムとのつながり:前の業者がつくった仕組みの引き継ぎ、データの移行
  6. 評価の方法:価格だけか、総合評価か、提案の評価項目と配点

「再委託」の決まりはとくに注意

仕事の一部をほかの会社に頼むこと(再委託)を、禁止したり、事前の承認を条件にしたりしている募集があります。協力会社と組んで受けるつもりなら、仕様書で再委託の決まりを先に確かめてください。

SaaSを持つ会社は「デジタルマーケットプレイス」も

自社でクラウドのサービス(SaaS)を持っている会社には、もう1つの道があります。デジタル庁のデジタルマーケットプレイス(DMP)です。

デジタル庁の説明では、DMPは、行政機関がクラウドソフトウェア(SaaS)を迅速かつ公平に調達できる環境を整えるための取組です。事業者がSaaSの製品や導入支援のサービスをカタログサイトに登録し、政府や自治体はその中から仕様に合うものを検索・選定して、随意契約や指名競争入札を行えるとされています。デジタル庁は、幅広い事業者の登録を促すことで、中小企業・スタートアップを含む多様な事業者の公共調達への参入を促すとしていて、中小企業・スタートアップも登録できると案内しています。

登録の手続きや条件は、デジタル庁のDMPのページで最新の案内を確かめてください。

小さく始めるコツ

よくある疑問

社員が数人の会社でも参加できる?

参加の条件を満たしていれば、会社の規模で断られることはありません。ただし、IT系の募集では、責任者や担当者の経験、作業できる人数、セキュリティの体制などを条件にしていることがあります。仕様書の「参加資格」「業務の実施体制」の欄を先に読み、自社の人数で無理なく回せるかを判断してください。少人数の会社は、運用・保守の範囲が小さい募集や、作業の内容がはっきり決まっている募集から選ぶと始めやすくなります。

前の業者がつくったシステムの保守でも受けられる?

前の業者がつくったシステムの保守を、新しく募集することはよくあります。その場合は、設計書などの資料がどこまで渡されるか、引き継ぎの期間があるか、ソースコードを見られるかが大切です。仕様書に書かれていなければ、質問の受付期間に確かめます。わからないまま安い価格で受けると、調べる手間がかさんで赤字になることがあります。

まとめ

IT・Webの募集は、システム、保守、ホームページなど言葉がばらばらで探しにくい分野です。入札ウォッチの無料登録で、IT・システムの新着を地域ごとに週1回メールで受け取れます。

出典・参考にした公式の情報

制度や金額は記事を書いた時点のものです。実際に申し込むときは、発注機関の公告・仕様書と、上の公式の情報で確かめてください。この記事は一般的な情報で、個別の案件への参加や落札を約束するものではありません。